i.主な経理業務内容
経理業務内容は大まかに以下のように分類できます。
■経理関連業務:会社の収支を把握する業務です。
①支払業務
社員が使った経費の精算、取引先への代金支払い、社員の所得税・住民税などの納付業務
②請求業務
商品・サービスの売上代金などを得意先へ請求する業務
③帳簿の作成
領収書などの書類等を参照し、金額や仕訳項目を会計ソフトに入力したり、給与計算ソフトの給与データ入力
販売管理ソフトの売り上げデータ入力など、データをソフトに反映させる業務
④管理資料の作成
部門やプロジェクトごとの原価や採算などを管理するため、会計帳簿とは別に、会社独自のフォーマットで管理資料を作成する業務
⑤決算・税務申告業務
税務署に決算書や確定申告書を提出するため、税理士と連携して提出書類を作成する業務
■人事労務関連業務:給与計算など社員に関わるお金の計算業務です。
①給与計算
社員の勤務日数、勤務時間などのデータを給与計算ソフトへ入力する業務
②社会保険手続き
厚生年金・健康保険・雇用保険・労災保険などの社会保険に関連する手続きを行う業務
③年末調整
社員の給与や控除データをもとに所得税を計算し、納付や還付を行う業務
■その他経理管理職に求められる業務:
ルーチンワークではない、必要に応じて行う経理業務で資金繰りに関してなど難易度が高いのが特徴です。
①税務調査の対応
決算書や確定申告書の信ぴょう性について、税務署が行う会社に対する実地調査に対応する業務
②銀行交渉
銀行から融資を引き出すためなど、銀行との交渉業務
ⅱ.中小企業の経理業務
中小企業の中でも従業員10人未満の経理部門は、売上に直結する部門ではないため、社長が兼任、もしくは記帳代行等アウトソーシングに頼る傾向が強いと言えます。
ただアウトソーシングに頼った場合は、帳票類の整理と会計ソフトへの仕訳入力のみの業務に終わり、過去の数字把握しかできません。よって将来の目標とする経営計画の策定などは二の次となってしまいます。
中小企業の経理は概ね10人規模以上の会社から専任担当者が必要になりますが、経理だけでなく、人事労務、総務庶務、社内システム等営業以外のすべての業務をこなせるオールマイティ型人材が好まれます。
会社の規模が拡大するにあたり、未来会計業務(事業計画、資金調達計画策定)が付加され、会社の守りだけでなく、会社が攻勢をかける上での重要な根拠数字の算出能力が求められます。
そのためにはリアルタイムでの正確な数字の把握に基づき、経営者に対する判断の材料を提供する仕事は、経理の仕事より管理会計の仕事の比重が高くなります。
会社の規模に応じて財務担当(経営幹部)として、経営の中枢にあたる銀行との折衝業務、中期経営計画の策定に関わることが、最終的なステップ・アップとなります。
ⅲ.経理業務の将来
経理の仕事は、今後、大きな変革の時を迎えます。単純作業はコンピュータが行うようになり、経理担当者に求められる能力は入力スピードや正確性、計算能力だけでなく、ITリテラシーや経理以外の専門知識も求められるでしょう。
近い将来1 ―経理業務の自動化―
ITの活用によって様々な作業が自動化される時代です。
ITの活用によって人々の生活はずいぶん便利になりました。
この自動化の波は経理業務の世界にも押し寄せてきます。
会計帳簿や経費精算といった様々な分野で自動化が進んでいますが、
今後益々この流れは加速し、経理作業を人間が担う機会はどんどん減少していくでしょう。
将来的に経理担当者は、経理業務をどのように自動化するのか、という立場で業務改善を計画・実行する力が求められます。
近い将来2 ―経理業務のアウトソーシング―
経理業務は従来、派遣社員やパート・アルバイトによって人材を確保することがよく行われていました。
ところが近年は派遣社員に対しての法的規制の強まりを受け、経理業務そのものを外部にアウトソースする企業が増えています。
経理業務の担当部署そのものを社内には置かず、外部の経理専門企業にアウトソーシングする企業も出てきています。
そうなるとこれからの経理担当者には、マネジメントの能力が求められるようになります。
これまで社内で行っていた業務をマニュアル化する作業、アウトソース先に業務の指示を出し進捗管理するなど、人を動かす能力が必要になってきます。
ⅳ.経理人材に求められる資質
時代の変化に合わせて、経理に求められる能力も変わってきます。
これからは経理事務さえ出来れば良いというわけには行かず、パソコンのスキルや簿記能力だけで十分だということも決してありません。
今後、経理スタッフに求められる資質として下記が挙げられます。
自己管理能力
自分で自分をコントロールする力のことで、スケジュール管理、時間管理、ルール・作業フローの管理、そして目標管理などが含まれます。
自分自身の体調管理、モチベーション管理も大切です。個人的に処理する業務が多い経理スタッフにとって、自己管理はとても重要です。
協調性
個人的処理が多いとは言え、自己管理だけでは組織としてのパフォーマンスは出せません。
部署の人数が多ければ多いほど、協調性が大事になります。職場の良い雰囲気づくり、仲間のフォロー、組織的な業務改善など、チームのためにどんなことができるのか、は重要なポイントになります。
経営的観点
経理スタッフは会社の経営に関する重要な数字にも触れる機会が多くなります。
これらの数字の持つ意味を学び、そして考え、数字自体や指標を分析し、
問題を抽出したり改善の必要性を提示できる経営者のような観点を持ったスタッフが求められるようになってきています。